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desert season

KUROの(全く方向性の定まっていない)趣味のあれこれ。

テロリストのパラソル/藤原伊織

テロリストのパラソル (講談社文庫)テロリストのパラソル/藤原 伊織 (講談社)
(1998/07)


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私は読書的に大変天邪鬼なので、いくら面白いと言われてもベストセラーや○○賞受賞作品と言うのは何となく敬して遠ざける傾向がありました。

今回読んだ『テロリストのパラソル』なんかはその最たるものの一つ。

江戸川乱歩賞と直木賞をという二つの有名な賞を獲得している作品を私は今まで読めずにきたのです。

そして、読んで大いに後悔しました。何で今まで読まなかったのかと。


【kuroのひとこと】

主人公・島村は、若い頃過失から罪を負い、22年にわたる逃亡生活を送ってきた男。仕事前にアルコールを摂取しないと震えが止まらない、すっかりアルコール依存症にかかったバーテンダーです。
息を潜めひっそりと暮らしてきた島村は、新宿中央公園で起こった爆破テロ事件に巻き込まれ、その生活が一変。店にやってきたヤクザから謎の警告を受け、かつての恋人の娘から、母親が爆発に巻き込まれ死んだことを告げられる。更に、死亡者の中に、学生運動時代の友人であり島村の逃亡のきっかけとなった事件の関係者・桑野がいたことから、島村はテロ事件に関与していると疑われる。
島村は再び逃亡し、かつ恋人や親友をはじめとした大勢の人を巻き込んだテロリストを追い始める。

作品は島村の一人称で語られるますが、奇を衒う表現は無くむしろ淡々としています。逃亡者なのにその境遇に腐ることと無く、一見もの静かなのに闘志を燃やして事件と対峙する島村は恐ろしく魅力的な人物です。
また、島村は事件を追う中で様々な人物に出会うのですが、彼に警告を発し後に即席の相棒になるヤクザの浅井、かつての恋人の娘・塔子など出てくる登場人物全てが肉厚で何かしら魅力を感じます。
作品全体のプロットは多少偶然が重なりすぎるところはあるものの、最後まで一気に読ませてくれます。

ラスト、島村は〈テロリスト〉と対峙する。

犯人は青春の日の残り火をずっと胸に宿したまま生きてきたある意味純粋な人間です。やったことは邪悪なことだけど、でも完全な悪とも言い切れないそんな雰囲気をまとっています。
しかし、同情はできるものの、引き返す道が無かったわけではなかったわけではなく、そこで引き返せなかったのが彼の本当の罪だったように思います。

島村は犯人に対し『私たちは世代で生きてきたんじゃない。個人で生きてきたんだ』と、言いはなちますが、犯人が世代にとらわれず個人をとっていたらここまでの事を起こすことは無かったのかも…。

この作品にはある一世代の出来事が深く影を落としています。
犯人の動機は、知識の無い、少し前の自分だったら全然理解できなかったかも知れない。いや、多分今もその世代でない私は本当の意味では理解していないのかも知れません。

亡くなった人たちと遠い時代への深い哀悼を感じさせる静かなラストシーンがいつまでも胸に残る、そんな作品でした。
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[ 2008/02/17 11:41 ] 本のこと | TB(0) | CM(0)
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